松竹ブロードウェイシネマこの秋10月より全国順次限定公開! 天才作曲家アーヴィング・バーリン新作ミュージカル「ホリデイ・イン」
今回ご紹介するのは、映画や歌舞伎、演劇など総合エンターテイメントの松竹が自信を持ってこの秋10月から公開する映画「ホリデイ・イン」です! 映画といってもブロードウェイの舞台をそのまま生収録した迫真の演技。三人の主演ジム役ブライス・ピンカム、テッド役コービン・ブルー、リンダ役ローラ・リー・ゲイヤーの熱演が光ります。試写会を終えてのリポートです!
Osukaこの「ホリデイ・イン」はブロードウェイで上演されたものを映画化したものですが、もとは1942年のアメリカ映画「スイング・ホテル(邦題)」(原題ホリデイ・イン)を現代版でアレンジしたものです。ビング・クロスビー、フレッド・アステア、マージョリー・レイノルズ主演で、アメリカの国民的作曲家アーヴィング・バーリン発案のもとに作られた映画は当時大ヒットしました。この映画は知らなくても、ここから生まれた名曲「ホワイト・クリスマス」は世界中のだれもが知るクリスマスの定番曲です。この映画を繰り返し何回も見ていたファンの筆者は、早速試写会へ行ってきました。
ブルー・スカイズショーの導入シーンからアーヴィング・バーリンの代表曲ブルー・スカイズが歌われます。この曲は、元になった映画には使われませんでしたが、誰もが知るこの曲を最初の導入部に持ってきたのはさすがの大成功。アーヴィング・バーリンを知らなくとも、この曲ならばどこかで聞いたことがあるはずです。最初からショーに引き込まれます。
この曲はマイナー調で歌詞が「ブルー・スカイズ」と始まり、出だしが暗いイメージなのですが、すぐに「スマイリング・アット・ミー」とメジャー調に変わって喜びを表現している歌だとわかります。主人公のジムがショー・ビジネスの世界「ブルー・デイズ」に見切りをつけて「ブルー・バーズ」が歌う田舎に行くと決心するシーンは最初の見せ場になっています。
O元になった映画のファンの筆者は、フレッド・アステアとマージョリー・レイノルズによる華麗なダンスが、どのように変わったのか興味がありました。心配ご無用、この作品でトニー賞にノミネートされた振付師のデニス・ジョーンズによるダンスは、ある意味ノスタルジックな音楽に現代風の溌溂とした勢いを持たせることに成功しています。
シェイキング・ザ・ブルース・アウェイショーの出演者たちによるクリスマスの飾りつけを見事なダンスシーンに変えた、大変楽しいシーンです。縄跳びやタップダンスもたっぷりあってダンスシーンの見せ場になっています。
レッツ・セイ・イット・ファイヤークラッカーズ元の映画では、フレッド・アステアが一人で踊るショーチューンになっており、手に持った爆竹を床に投げて次々にならしそれに合わせてダンスをするというものです。さすがダンスの名人アステアはほれぼれするような名シーンにしていましたが、今回のコービン・ブルーもそれに負けず劣らずの熱演です。これには振付のデニス・ジョーンズもご満悦。なによりも観ている観客が大満足というショーチューンに仕立てあがっています。
Oアーヴィング・バーリンは、経済的な理由からまともな音楽教育を受けておらず、曲作りは最初は作詞家としてでした。後に自己流でピアノを覚えそれから作曲もするようになりました。そのためか、わかりやすいメロディの作風で、子供から大人まで楽しめる大作曲家になりました。
チーク・トゥ・チーク頬を寄せ合って踊る、これだけで天国にいる気分だ、と歌われるこの曲はバーリンの代表作です。曲の力が強く、いつの世になっても歌い継がれるこれぞスタンダード曲。この「ホリデイ・イン」はアーヴィング・バーリンのスタンダード曲を生かすべく、設定をあえて元映画同様この曲たちが作られた年代1940年代に演出されたのが第一の成功の要因だと思われます。ノスタルジックで懐かしく、どこか新しいセンスが、作品に新しい息吹を与えました。
O百一歳まで生きたアーヴィング・バーリンはアメリカを代表する大作曲家です。3,000曲を超えるという自作曲の中でも、一番有名なのはこの映画で世界的に売れた曲「ホワイト・クリスマス」です。この曲はいまだにクリスマスの定番曲として全世界で愛されています。
ホワイト・クリスマスこの曲を最初にヒットさせた元映画の主演ビング・クロスビーは、最初はあまりこの曲を気に入っていなかったという逸話が残っています。そのせいか、オリジナルの歌いまわしと現在知られているメロディが違うのが特徴的です。出だしの歌詞「アイム・ドリーミング・オブ・マイ・ホワイト・クリスマス」のドリーミング部分をビングはトリル(音を上下させる)を使って節を加えて歌っています。それが、映画後、この曲が話題になるとその節回しをやめて、ストレートに歌うようになりました。現在でも売られているバージョンはこちらになります。興味がある人は聞き比べをしてみてください。
O元の映画への思い入れがあった分、正直どうなのかという思いで見終わって、それが杞憂に終わったというのが感想です。伝統を生かしつつ現代にアピールする楽しいブロードウェイ作品になっていました。ブロードウェイに行かずして、これを見ることができるのは非常に得した気分。歌と踊りに、ゴードン・グリーンバーグによる舞台らしい笑いもしっかり押さえたエンターテイメント作品です!
『ホリデイ・イン』
▪ 公開日:2023年10月6日(金)より全国順次限定公開!
▪ 公開情報(「劇場公開作品」内)
ブロードウェイの息吹を直接感じさせてくれる松竹ブロードウェイシネマの次回作に更に期待したい!