ジャズメンオリジナルベスト3 JAZZ Men Original Best3

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ジャズメンオリジナルベスト3 JAZZ Men Original Best3

ここにおいての「ジャズメンオリジナル」というのは、ジャズミュージシャンによってジャズ演奏のために作られた曲を指す。そもそもジャズにおいては、このオリジナル曲か、もしくは古くからのレビューやポピュラーや映画、ミュージカルなどから用いられるスタンダード曲のどちらかを素材にしている。そこにおいて各々がそれぞれ自分なりの解釈なり、アドリブを演奏している。

そのジャズメンオリジナルの多くは、ブルーズ進行やリズムチェンジ(循環コード)であったり、その他のスタンダードのコード進行をもとに作られており、録音のその場で簡単にメロディーが作られたものも多くある。その理由としては、モダンジャズ期においての録音の多くが、リハーサルをあまりなされない状態で行われたということや、ジャズの行き方として、曲のテーマよりもアドリブに重きを置かれたということがあげられる。そのアドリブが、即興によるメロディ創作にあたるものだとすれば、ジャズメンは平素から演奏時は常に作曲作業をしている事になる。

本来、アドリブはテーマの流れから自然発生的に派生していくものと思われていたが、ジャズにおいてはその境界線ははっきりしておらず、むしろアドリブのフレーズやコード進行のとらえ方から逆にテーマが作られるような場合も多い。モダンジャズの黎明、「ビ・バップ」においてはその傾向が強く、特に牽引車となったチャーリー・パーカーの楽曲の影響は計り知れない。このビ・バップ期からすでに従来のコード進行から派生させた独自のコード進行によるものが演奏されていくようになり、それがビ・バップの基本理念として定着していく。

とは言え、一般的なミュージシャンにおいては、やはりブルーズやリズムチェンジなどを用いて演奏をしており、そこにおいてオリジナル性を強調したいジャズメンは、本当の意味でのオリジナルを創作しようと曲作りに集中した。

そもそも杓子定規な事とは最も反対の存在でいることが重要なジャズメン達の中にあっては、コード進行も従来のものをそのまま使う事を良しとしなかったのは当然の流れと思われる。場合によってはコード進行のみならずリズムまでも変則的なオリジナルの曲を作ってしまい、またそれが成功している場合がある。そこにおいて、本当の意味でのオリジナルな楽曲の創造となった。その代表的な曲が次のベスト3である。

第1位 「テイクファイブ」

ザ・デイヴ・ブルーベック・カルテット「タイム・アウト」

あらゆるジャズメンオリジナルの中でも、あらゆる人々に知られている曲がこの曲であることは間違いがない。1961年のビルボード・ホット・100では25位に入るほどポピュラーシーンでもヒットをし、その後もテレビやCMなどでも今に至っても使われることが多い。

その変則的な5拍子のリズム、印象的な繰り返しのデイブ・ブルーベックによるピアノのイントロ、躍動感あふれるジョーモレロのドラムの響き、そしてなんといっても作曲者でアルトサックス奏者のポール・デスモンドの透明感がありながらも艶やかなアルトから奏でられるテーマメロディ。どれをとっても秀逸な名曲であり名演。

第2位 「チュニジアの夜」

ディジー・ガレスピー「チャーリー・パーカー・ストーリー・オン・ダイアル Vol.1」

この曲ほど、ジャズの内在する熱を表現した曲はない。そもそもジャズは西洋のメロディとアフリカのリズムがブレンドされた、アクティブな音楽。どこかオリエンタルなテーマ部分は、誰もが憧れる異国の情緒をたっぷりと感じさせてくれる。あたかもそれは、実在のチュニジアではなくて、この曲を聴くそれぞれが感じる異国であるかのように響く。

テーマの後のブレイクが有名なアドリブの出だし、「フェイマス・アルト・ブレイク」も聴きもの。アルトサックスのチャーリー・パーカーが同じようには二度と吹けないと言ったとされる有名な出だしの部分。音符の長さでは割り切れない熱気にあてられ、聴く者をそれぞれのチュニジアに誘う。

第3位 「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」

セロニアス・モンク「セロニアス・ヒムセルフ」

オリジナルという言葉がこの人ほどに会う人はいない、セロニアス・モンク。そのモンクの代表作がこの曲。インストールメンタルとしてはもちろん歌詞もつけられ歌としても、今日に至るまで様々なミュージシャンに取り上げられる名曲。ジャズの持つ夜の部分をこれほど表現した曲はなく、孤独なモンクの独白にも似た寂寥感が漂う。

ここでのモンクは文字通り、一人。一聴、たどたどしく自分の曲を他人の曲のように弾いていくモンクのピアノは、ジャズの最大の要因のリズムを超え、メロディを超えて響く。

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