モンティ・アレキサンダー「HARLEM-KINGSTON EXPRESS ライブ」

2013年2月

モンティ・アレキサンダー「HARLEM-KINGSTON EXPRESS ライブ」 ブルーノート 東京

ジャズイメージジャズ100年の歴史の中で、名曲や名演は数多くあれど、事アルバム単位で全曲おススメできるものをと言う事になると、その数はかなり限られたものになって来る。

それが、初心者のためにとなるとさらに限定されてしまう。ここでは、厳選に厳選を重ねた結果、奇しくもベスト3が全てジョン・コルトレーンのものになった。

ここにあげた3枚はどれもが、ジャズを初めて聴く初心者に自信を持っておススメできるものばかりである。これを聴いて、あまりピンとこない場合はジャズは向かないと断言できるよりすぐりの名盤3枚と言える。

もちろん、この結果を持って、ジャズの全てはジョン・コルトレーンであるとか、ジョン・コルトレーンだけ聴けば良いとか言うものではない事は明記しておく。ジャズはそんなに浅いものではない。いかな、ジョン・コルトレーンでも、ここにあげた3枚以外では、アルバムトータルで楽しめるものは後期のインパルス時代の「至上の愛」か「クレッセント」くらいしかなく、たしかにどちらも名盤だが、それとて通して聴くのは万人にはおススメできない。前期や中期にあたるプレスティッジやアトランティック時代には幾多の名演はあるが、アルバムを通してコンセプトがずれずに、しかも聴きあきないものはというとどれもが該当しない。

しかし、いずれにしても、晩年はフリージャズの世界に踏み込み、大衆的人気からは最も遠いところへと行ってしまったコルトレーンが、ジャズ初心者でもわかりやすく、聴きやすく、しかも必ずや心を揺り動かす音楽を残したということは特筆に値する。

ここにあげたベスト3はそれぞれのジャズの側面である、アクティブなアップテンポ中心の曲や、ゆったりとしたバラードやスロー、ジャズボーカルとそれをサポートする伴奏などの点からみても最高の見本が展開される。

この3枚を聞いて、ジャズに少しでも興味が湧いた場合は、コルトレーンはもちろん他のミュージシャンやジャンルのジャズに踏み込んで行くことを心からオススメします。勇気を持って進めば、必ずそれなりの見返りが得られる事ができる世界、それがジャズの最大の魅力。ようこそ、深遠なジャズの世界へ。

HARLEM-KINGSTON EXPRESS LIVE !

「ELUTHERA」

このモンティオリジナルの曲「ELUTHERA」は、リズム隊がジャズバンドとレゲエバンドの2つを同時に従え、縦横にジャズとレゲエのボーダーレスなサウンドを行き来するという、この「HARLEM-KINGSTON EXPRESS」の特徴をよく表したもの。シリアスなモードジャズサウンドから3:22の所で一転レゲエのサウンドに切り替わるが、不思議と違和感なく一つの曲としてまとまっている。最後の方では、モンティのお気に入りでライブの最後には必ず演奏する「バナナ・ボート・ソング」の一節も出てきて楽しい。

Goin' Yard

「HOPE」

今回のライブでも演奏した曲。モンティが乗りの良い跳ねるようにスイングするピアノというだけでなく、意外なリリシズムをも持ち合わせていることを証明するチューン。モンティのリリシズムは、例えばビル・エヴァンスのような内省的なものではなく、むしろそれを振り切って回りに訴えかけていく強さも併せ持っている。彼の考える「ホープ」が感動的なピアノによる抒情詩となって聴くものを感動させる。続くレゲエナンバーの「エクソダス」への流れも自然。

MONTY ALEXANDER IN TOKYO

「セント・トーマス」

1979年に東京で録音されたこの曲は、テナー奏者ソニー・ロリンズの代表作。母方がカリブのヴァージン諸島出身という事で、ニューヨークに生まれ育ったロリンズのカリブ音楽へのオマージュ。ここでは、同じカリブ海のジャマイカ出身のモンティが、本場の乗りを見せる。この当時は、ジャズピアニストとしての評価が固まっていたモンティが、アドリブの1:19の部分に、現在ではおなじみのカリビアンなフレージングを思わず使っている所が、後の彼の方向性を示唆する様で面白いところ。

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